Eefdeの水門 – 予知保全
多くのグローバル企業が目指すワールドクラスメンテナンス
産業界全体の基準を高めることはプロセス全体の向上につながります。オランダの水運インフラにもこうしたガイドラインが適用されています。
インフラの整備と管理には大きなイノベーションの需要があります。さまざまな関係団体が協力するFieldlabのプロジェクトCAMINOは、センサとデータ解析を利用し、100%予測可能な水運インフラ整備を実現するアプリケーション開発を行っています。
このプロジェクトは、オランダのインフラ設備の建設・管理等を管轄する省庁のRijkswaterstaatと、プロジェクトパートナーのMobilis TBIが、Eefdeの複合水閘(すいこう)施設の閉鎖環境を含めた、水閘門自体の状態に関する知見を獲得し、施設整備に新しい革新的な技術を試験的に導入するため始められたパイロットプロジェクトです。プロジェクトは、インフラの保全・整備作業を100%予測可能にすることを目的とします。従来の改良保全・予防保全活動などのソリューションではもはや十分な対応が難しくなっています。
ジャストインタイムメンテナンスの課題
起こりかけている不具合を適切なタイミングで早期予防することは、コスト節約につながります。そのためにはスマートなアプローチが欠かせません。つまり、センサシステムやデータ予測モデル、ビッグデータ、モノのインターネット(IoT)などを新たに開発し、インテリジェントなメンテナンスが必要です。ifmはリアルタイムメンテナンスソリューションを提供するプロジェクトパートナーとして参加しています。
プロジェクトのすべての参加者が、水運システムと構造物のメンテナンスや、監視・管理、測定・解析技術、並びにデータアーキテクチャの設計・保存の分野に精通し、培ってきたノウハウと経験で貢献しています。
Eefdeのプロジェクトの目的は、実際の状態が自動で分かり、アルゴリズムにより分析して構造物や必要なメンテナンスの改善を自動的に提案する「スマートロック」を開発することです。
このプロジェクトでは、産官学が連携してさまざまな分野から幅広くパートナーが集まり協力するという、プラスの実績がすでにあります。つまり、それぞれが独自のソリューション開発に投資を行っています。
センサとアプリケーションの知識が豊富なifmは、このプロジェクトで重要な役割を担っています。様々な産業で培ってきた経験を活かし、大いに貢献しています。我々は非常に満足しています。」
故障の予防
Eefdeの水門は地域の重要な機能を担っています。ここは、アイセルからトウェンテ運河への入口となります。そのため多くの企業がこの運河を利用して輸送を行っています。
万が一、水門に計画外の稼働停止があれば多大な問題が生じます。水門が建設されたのは1933年です。Rijkswaterstaat(インフラ設備の建設・管理等を管轄する省庁)は、生命線ともいえるプラントのメンテナンスを、より良い方法で管理したいと考えています。
状態を常時監視
水門のスムーズな開閉動作を確実に行い、計画外のダウンタイムを回避するため、状態に即した保全ソリューションが導入されました。この部分には、プロジェクトパートナーのifmの振動診断ユニットが、水門のモータとギアに設置されています。ベアリングに損傷の兆候があると振動特性が変化します。センサがそれを検出し、しきい値に達すると通知します。そのため、故障によって突然停止する前に、部品交換を計画して実施できます。
オランダMobilis TBIのアセットマネージャRuud Schoenmakers氏は、次のように説明します。
「私たちが目指しているのは100%の予測を実現することです。つまり、予防保全や改良保全は昔の方法です。あらゆるデータを測定して、必要なメンテナンス作業の計画と実施を最適化します。予知保全とは、測定・収集したデータから情報を取得して適切なタイミングでメンテナンスを実施できるようにすることです。
そのタイミングは、対象物や部品、システムの性能、故障特性や劣化の挙動といった予測可能で一定の測定が可能な一連の要素以外に、気象条件・水位・配置できる人員の数、水門の稼働時間などの要素で判断します。これらの測定可能な客観的要素に基づいて、最適な時期を選んで不本意な想定外のメンテナンス作業を防止します。
以前はメンテナンス作業を定期的に実施していました。しかし、コストが高く計画外のダウンタイムのリスクを完全に最小限に抑えることはできませんでした。また、まだ使える部品も念のため交換していました。そのため、不必要で高額なコストが発生していました。予知保全は、コストを最小限に抑えて稼働の信頼性を最大限に高めます。
既存のプラントを維持
歴史的な価値のある複合水閘施設に手を加えないことが、オペレータにとって重要なことでした。そのためifmは、プラントを改造し稼働に影響が全くないソリューションを導入しました。振動診断を後付けで、いわばプラントが自律して稼働できるシステムにしています。
振動の他にプラントの温度と湿度をセンサによって制御し、状態評価に記録します。測定値とアラームを無線ゲートウェイ経由で制御室に伝送してデータの診断と分析が行われます。また、ifmのDS2505同期監視用診断ユニットが、閘門左右にあるチェーンホイストを監視します。
結論
振動監視はワールドクラスメンテナンスの小さな部分にすぎません。しかし、取得したデータがプロセスの深い理解と最適化に貢献し、そこから得られた知見が将来的に他のプロジェクトに利用され、100%予測可能な故障を防ぐ水運インフラの実現に役立つことになります。