モバイルアプリケーションの制御技術に頼った消火活動におけるIturri
火や水をくぐりぬけるifm
消防車や機器用コンテナを使用する際:現在、消火活動において電気制御技術がないとほとんど何も機能しません。Iturriはグロバールな消防車シャーシメーカーです。同社は20年以上にわたり、自動化のスペシャリストであるifmが提供するモバイルアプリケーションの制御ソリューションを頼りにしてきました。
消火活動においてはスピードがすべてではありません。それと同じくらい重要なのは、使用する機材の信頼性です。高熱や大量の水など過酷な環境下でも、完璧に機能しなければなりません。常に消火活動の一部であるもの、それはさまざまな消防車の機能に欠かせない最新の制御技術です。
Iturriはジーガーラント地域のヴィルンスドルフに拠点を置くメーカーで、国際的に事業を展開する同名の企業グループに属しています。スペインで創業した同グループは消防車のカスタム製造を専門としています。
ドイツの工場では、年間に約80~100台の消防車や特殊用途車両を製造・納入しています。同社の製品ラインナップでは、消防車に加え、機器車両、環境保護車両、指揮車両、緊急現場の衛生車両などが目を引きます。国内外で、地方自治体、同業種の企業、空港などを顧客としています。
森林火災用消防車
現在、Iturriが開発した森林火災用消防車が特に注目を集めています。これは全地形対応の四輪駆動車で、極端な急斜面だけではなく、30度を超える横断勾配も克服できます。この車両には、最初のスペインの会社が、森林火災の多い南ヨーロッパで数十年にわたり集めてきたノウハウのすべてが結集されています。 たとえば、車両は耐火性のある特殊塗料でコーティングされています。また、特殊な断熱材が運転室の乗員を火災付近の極端な高温から守ります。 ブレーキラインや電気ケーブル類は耐熱材料で覆われ、熱や物理的ダメージから保護されます。
自己保護システムは、この車両の特別な機能の1つです。必要に応じて、車両の外側に取り付けられたウォーターノズルから車両の窓やタイヤに向かって、勢いよく放水することができます。これにより、緊急時には、火の中を車で走り抜けるだけで、周りを取り囲む火の壁を逃れ、自力で避難できます。この自己保護システムのために、この車両は別途、500リットルの専用水タンクと独自のポンプシステムを備えています。
近年、ドイツのニーダーザクセン州やブランデンブルク州などにある、深い森林に覆われたエリアでも森林火災が増えています。そこで、この問題を抱える連邦州も、ヴィルンスドルフのIturriから森林火災用の特別な消防車を購入することを決めました。
中央制御機能
現代の消防車は、総合的な制御技術がなければ管理できません。中央PLCは、多数のセンサに支えられながら、いろいろな種類の車両で、さまざまな制御や調整作業を行います。
たとえば、水に湿潤剤を添加した消火剤は、流量センサを活用して、目の前の火災の種類に応じ、適切に散布されます。このために必要な定量ポンプは、PLCにより、CAN信号経由で制御されます。消防士は、グラフィック表示のディスプレイ付きコントロールパネルから火災の種類に応じて選択された散布量を設定し、確認することができます。
圧力センサは噴射管の水圧を検知し、必要な流量と圧力になるようにポンプを制御します。このポンプを動かしているのは車両のエンジンの補助駆動装置です。コントローラは、水圧の設定値が一定になるように、ディーゼルエンジンの速度を調整します。このために、車両エンジンに対するJ1939プロトコルをサポートするCANインターフェースが使われています。
緊急現場を確保するための特別な信号システム(点滅する青色灯とサイレン)のような信号灯や照明などの追加機器はモニタを介して可視化および操作され、中央PLCによって制御されます。ドアやロールシャッターは誘導センサにより監視されていて、車両はこれらが閉まっているときだけ走行できるようになっています。
論理演算もコントローラに保存されます。例:サイレンが作動したときには、自動的に青色灯も点灯しなければなりません。しかし、帰路では、青色灯は点灯しますが、サイレンは鳴りません。後部の警告装置(黄色のLED灯)は徐行運転中にのみ点灯し、一定のスピードを超えたときには、自動的に消灯する必要があります。コントローラは、車両の制御システムからCANバス経由で直接、速度の値を受け取ります。
静水圧測定原理を利用した圧力センサが、車両内の水タンクと消火剤タンクのレベルを監視し、運転席と車両後部にあるさまざまなディスプレイに表示します。
車両シャーシに取り付けられた傾斜センサは、車両の前後方向と横断方向の傾斜角を判断します。コントローラは消火剤タンクのレベルと車両速度に応じて、傾きの臨界角を判断し、音声出力を含む視覚的および聴覚的な信号を使って、タイムリーに運転手へ知らせます。
高い要求
前述の例は、中央コントローラに対する要求がいかに広範で複雑であるかを示しています。Iturriは長年、これを自動化のスペシャリストifmのソリューションに頼ってきました。
Iturriのプログラマー、Jens Schölerは次のように述べています。「これまで、制御機能は従来どおり、ワイヤを引き回して実装されていました。その後、車両メーカーがCANバスに切り替えましたが、それまで使っていたコントローラではこれに対応できませんでした。そこで、いろいろなメーカーのコントローラをテストしてみたところ、私たちの要件にいちばんあっていたのがifmのコントローラでした。私たちが必要としていたものすべてに対応していましたし、値段も手ごろでした。このようにして私たちはifmを選んだのです」
ifmはecomatmobile製品ラインをベースに、モバイル用の強力なコントローラやディスプレイ、操作ユニット、I/Oモジュールを提供しています。産業環境で使用される同等コンポーネントとは異なり、これらのコンポーネントは車両での特殊な使用要件に合わせて設計されています。たとえば、ハウジングは特別に密封されていて、運転席の外側に取り付けることもできます。焼けつくような暑さや凍るような寒さなど極端な温度が、衝撃や振動以上の影響を与えることはありません。筐体もEMC耐性を持ちます。
Iturriの管理責任者Klaus Kutzner工学博士:「EMCは当社の車両にとって重要な要件の1つです。無線機や青色灯、電子制御装置など、車両に搭載される電化製品すべてにこのEマークが必要です。ifmはこのEマーク付きの制御部品やセンサを提供する数少ないメーカーの一つです。」
高性能コントローラ
現代の車両やモバイルマシンは、多数の入出力信号を処理できる極めて強力な制御電子機器を必要としています。このために特別に開発されたのが、新しい第3世代ecomatControllerです。このコントローラは2つの独立した内部PLCを備えていて、その1つはセーフティコントローラとして認定されています。
コントロールエレクトロニクスはコンパクトな金属外装に内蔵され、モバイルで使用するために前面取り付けのコード化されたセントラルプラグを備えているため、入出力、通信、プログラミングに必要な接続がすべてそろいます。RGBの状態表示LEDで、非常に重要なシステムメッセージを示します。
コントローラのコアは、モバイルアプリケーションの電子機器に適用される規格に準拠して設計された、クロック周波数300 MHzの最新のマルチコア32ビットプロセッサーです。アプリケーションメモリは6 MBで、そのうち1 MBはファイルストレージシステムです。
ecomatmobileコントローラは通信用のCANインターフェースを搭載しています。このインターフェースは、J1939プロトコル経由で車両ユニットと通信するために使用されます。警笛、ライト、環境センサ、リアビューカメラなど車両シャーシ内のその他のコンポーネントはCANopenプロトコルを使って、CANインターフェース経由で通信を行います。
ここで使用されているCR711Sコントローラには入出力ポートが60個あり、診断機能付きのデジタル、周波数、またはアナログ入力、もしくは抵抗測定用入力として設定できます。アナログ入力は、電流/電圧の両方の測定を可能にします。出力はデジタルまたは診断機能付きのPWM出力として、電流制御ありなしのどちらにでも設定できます。CAN I/Oモジュールを経由すれば、使用可能なポートをさらに増やすことができます。
プログラミングは標準化されたIEC 61131-3言語で行います。プログラム作成を容易にするため、ifmは、J1939プロトコル経由でディーゼルエンジンに対応するためのメーカー固有のファンクションブロックなど、無料のファンクションライブラリを提供しています。
可視化と操作
この森林火災用消防車はifm製のHMI(Human Machine Interface)を運転席に2個、車両後部に1個の合計3個搭載しています。関連する車両パラメータと消火剤パラメータは、分かりやすい記号を使ってカスタマイズおよび可視化され、消防士に向けて表示されます。消防士はアクセスしやすいプッシュボタンを使って、ディスプレイを切り替えたり、プロセスの値を変更したりすることができます。
ここで使用されるifm製のCR0452およびCR1082ディスプレイ・操作ユニットにも、入出力ポートとCANインターフェースを搭載した統合PLCが入っています。Iturriは、HMIで、これらの分散 コントローラを使って、データの前処理を行います。たとえば、環境センサの測定値(外気温, 大気質、風向き、風速など)はディスプレイコントローラで前処理され、完成したデータセットとしてメインコントローラに送信されます。これにより、この時点でのプログラム作成が簡単になるだけでなく、効率的なプロセスフローが確保されます。
ifmとの連携
Iturriは20年以上にわたり、制御技術の分野でifmと緊密に連携してきました。
Jens Schöler氏は、彼がifmを高く評価している点を次のように説明しています。「ifmと仕事をする大きな利点の1つに、ifmが、たとえば、いろいろな有名自動車メーカーのシャーシへの接続など、多くの機能に対応し、すぐに使えるソフトウェアモジュールを提供しているという点があります。このようなモジュールは、ifmのウェブサイトから無料でダウンロードできます。これは非常に助かります。私たちは制御プログラムをすべて自社で記述していますが、ここでもifmのサポートに頼ることができます。たとえば、新しいディスプレイを使用する場合、その過程で、プログラムを作成するか、または適応させなければなりませんが、ifmは専任の担当者を設けて、その人が私たちのところに来て、現場で実装を助けてくれます。これはifmの大きな強みです。有名なメーカーはほかにもありますが、もし、そこに連絡したら、サポートを受けられるまで、無駄に長い時間、待たされるかもしれません。しかし、ifmに連絡すれば、電話か、またはサポートスタッフが直接来てくれて、すぐに助けてもらえます」
結論
包括的なセンサ技術や直感的な入力ディスプレイなど、バックグラウンドにある広範な制御機能のおかげで、消防士は現場で実際の作業、つまり効果的な消火活動に集中できます。ifmとの長年にわたるパートナーシップにより、Iturriはこの要求を完全に満足させることができます。