- 港湾の自動化
- モバイル用コントローラがクレーンをインテリジェントなマシンに変換
建機・特装車用コントローラがクレーンをインテリジェントなマシンに変換
需要の増加とばら積み貨物船の数の増加により、船舶の積込みおよび積降しをより迅速に行うことがますます重要になってきています。そのため、バルク処理のためのより大きな積替えクレーンが必要になっています。しかしローダは、経験豊富なクレーンオペレータを見つけることが困難です。そのため、できるだけ操作が簡単で、強力なクレーンが必要とされています。
ここ数年、このような傾向を受け、アデゲムに拠点を置くベルギーの積替えクレーンメーカーIndusignが進化を引き起こしました。Indusignは1990年にエンジニアリングオフィスとして設立されましたが、数年後、顧客の要望によりメーカーに転身しました。現在Indusignは年間10~14台のクレーンを建造し、E-Craneというブランド名で、世界中で使用されています。
成功事例:最大サイズのクレーンは高さ25 m、幅45 mで、600 kWの駆動モータにより1サイクル当たり45トンを移動できます。このような巨大なクレーンの使用は、何年か前から一般的になっています。10年前は、積替えクレーンの平均容量は5~10トンでしたが、現在では10~30トンです。港湾でのロジスティクスプロセスを加速するには、これしかありません。これらのクレーンは巻き上げクレーンとは比較できません。巻き上げクレーンは、1日当たり限られた移動回数の使用を想定して設計されていますが、積替えクレーンは継続的に使用できます。さらに、クレーンはコンテナの移動や船上のボブキャットの吊上げなどを行えるよう柔軟な動作が期待されます。
近年IndusignのE-Craneはクレーンの電子制御を搭載しました。当初の目的は、油圧タイプの使用機会が減少していたため、油圧バルブ付きのジョイスティックを電子バージョンに置き換えることでした。コントローラがクレーンに取付けられた油圧バルブを電子制御します。コントローラは電気的にクレーンの油圧バルブを正確に制御します。コントローラの設置後、次々に機能が追加され、現在では制御、表示、診断機能を備えたインテリジェントなマシンになりました。
バランスの取れたプロジェクト
E-Craneの文字Eは、equilibrium(均衡)を表し、クレーン独特のバランスというコンセプトに関係しています。ブーム(メインアーム)は平行四辺形です。第2アームはフロントアームとクレーンのカウンタウェイトをつなぐ接続ロッドです。 フロントアームの動きはカウンタウェイトを油圧シリンダで伸縮させることで作用され、コネクティングロッドを介して作り出されます。結果:フロントアームが前進しているときにはカウンタウェイトを後に振り、全体の重心位置が変わらないようにします。
この均衡により、モータのパワーを不均衡の相殺に使用する必要がなく、積荷の吊上げと、クレーンの移動のためだけに使用されるため、エネルギを節約できます。ケーブルクレーンとは対照的に、この構造には別のメリットがあります。積荷が揺れないため、クレーンオペレータの経験に頼らず、より迅速に作業できます。クレーンは2本のジョイスティックで操作されます。ブームとフロントアームの動きに加えて、クレーンの旋回、グラブの開閉と回転も行えます。これらのすべての動きは油圧で駆動されるため、クレーンには電気モータと油圧ポンプが搭載されています。
電子制御への切替えは、以前使用されていた油圧バルブ付きジョイスティックが入手できなくなったためです。油圧バルブの制御用の電気入力信号を変換するため、電子式ジョイスティックと新しいコントローラに置き換えられることになりました。その後、電子制御にすることで、作業ゾーンの端にさしかかった時の加減速の制御など、他にも多くの改善に活用できる可能性があることが明らかになりました。クレーンの動作は瞬発ではなく、安全性と耐久性が期待されます。
様々な種類のセンサを制御装置に接続して、速度を積荷重量に合わせたり、制御の過負荷に対する保護を組込むことができました。
もう一つの優れた開発は、クレーンのオペレータが、クレーンの状態を数値で確認することが出来るグラフ表示のインターフェースがあることです。クレーンの積荷はオペレータにとって最も重要なパラメータですが、その他の情報を含め、一連のエラーメッセージがインターフェースにグラフで表示されます。インターフェースには多数の診断画面が備わっており、クレーンの様々な状態データにアクセスできます。インターフェース内のフラッシュメモリカードには、約60個の変数の値が約2秒ごとに保存されます。
このような改善により、オペレータとサプライヤのメンテナンススタッフの作業方法が大幅に変わりました。以前は、クレーンアームのダイナモメトリックセンサ(ロードセル)の接続ケーブルが劣化した場合、安全上の理由によりクレーンが停止し、セーフティシステムはリレー制御盤内でブリッジされていました。
現在では、ソフトウェアで行えるので、一時的にセーフティシステムをブリッジすることをサプライヤと共に決定できます。この手順は記録され、アラームなどをトリガできるため、一時的に減速してメンテナンスすることをプログラムに入れることができます。この実装により、機械の効率、信頼性、寿命が向上します。
厳しい条件で使用される建機・特装車用コントローラ
慎重な検討を重ね、このアプリケーションにはifmの建機・特装車用コントローラR360シリーズが選ばれました。「産業用」コントローラと比較した際の「建機・特装車用」PLCの主なメリットは、堅牢さです。この建機・特装車用コントローラはEマーク(E1:ドイツ)認証取得済です。-40℃~+85℃の温度範囲で機能し、保護構造はIP 67、電磁干渉に高い耐性を持ちます。このアプリケーションのもう一つの特長は、電源電圧が低く、バッテリで給電できることです。そのためクレーンは独立して機能できます。
クレーンメーカーにとってもう一つの重要な基準は、システムのオープン性でした。Indusignにはエンジニアリングのノウハウがあり、自社の機械テクノロジを開発してマスタしたいと考えています。ifmのPLCはオープン規格であるCODESYSでプログラミングされ、設備のさまざまなコンポーネント向けのソフトウェアモジュールを備えた完全なライブラリが搭載されています。そのため同社は、センサ、バルブ、その他のコンポーネントに関して、決められたシステムサプライヤに依存することはありません。同社は、電子制御への切り替えに全従業員を参加させ、自発的で効率的な方法を適用しました。PLC、HMI、すべての入出力のシミュレーションテスト設備を社員食堂に設置しました。各オペレータは、自由時間に練習できました。さらに、テスト目的と顧客のリクエスト実装のため、エンジニアリング部門にも同様の設備を設置しました。
クレーンの自動化は建機・特装車用PLCに標準インターフェースがあるCANバスに基づいています。I/Oモジュールを機械の各所に計5個バス接続します。モータと油圧ポンプを備えた「電源装置」に2個、運転台に2個、そしてもう一つはバルブ付近のクレーンシャーシにあります。ifmのディスプレイもCANバスに接続され、すべてのシステムパラメータへアクセスできます。インターフェースレベルでも、すべての変数が定期的にメモリカードに保存されます。この履歴は、ディスプレイレベルでプログラムされたインターフェースの診断およびメンテナンスに活用できます。
リモート診断
クレーンの自動化により、別の可能性がも出てきました。リモート診断です。この目的で、特殊なGSMモデムがCANバスのシステムに組込まれました。このモデムにより、世界中のクレーンをアデゲムのプラントから呼び出すことができます。このモデムは3種類の周波数帯に対応し、各地のネットワークに適応します。リモート接続は技術的には難しくありません。クレーンに搭載されているディスプレイと同様に、プラントからバス上の変数にアクセスできます。同様のソフトウェアを使用して、リアルタイムでクレーンオペレータと同じクレーンを表示できます。以前、センサケーブルの不具合が発生したことがあり、その時はモデムを介してユーザとサプライヤが協力して解決できます。ユーザレベルにより、アクセスや操作権限が異なります。モデム経由で受信したデータは、エンジニアリング部門のテスト設備にも伝送できます。
CANバスのこのようなコンセプトから生じる問題は、PLCがクレーンを動かすためだけでなく、機能面でも非常に重要な役割を果たすということです。経験豊富なメンテナンススタッフは多くの調整を自身で行ってきましたが、現在は、すべての変更をソフトウェアで行います。大きなクレーンにとって、建機・特装車用PLCはサイズも小さく、一見大した役割をしていないように見えますが、システムにとってとても重要です。Indusignは、コントローラの選択と同様に、オープン性を提供ます。つまり、ユーザが制御の調整を行いたい時には、サプライヤからソースコードを受け取ります。実際には、このような要望はまだ行われていません。クレーンは、メーカーが心底まで知り尽くした市場の一部で、システムすべての機能が業界の需要に合わせて開発されています。最後に:インターフェースは、クレーンの運転台からユーザの他のソフトウェアシステムで実装できます。