CVA – 水力発電所のデジタル化
再生可能エネルギー会社CVAを支えるifmの状態監視ソリューション
イタリアのヴァッレ・ダオスタ州の電力会社Compagnia Valdostana delle Acque(CVA)は、水力を中心に再生可能エネルギーによる発電で電力を供給しています。同州にある主力の32の水力発電所は合計900MW超の発電能力を持ち、風力・太陽光発電とあわせて2027年までに800MW以上の発電出力を達成する計画です。遠隔から制御する発電所の安定した稼動を、FA自動化を専門とするifmのセンサとソフトウェアが支えています。
2001年に設立されたCVAは、年間平均で約30億kWhの電力量を発電しています。その中で発電出力が最も大きいヴァルペッリネ(Valpelline)水力発電所は、1950年代に建設され、プラチェ・モウリン(Place Moulin)ダムの貯水池から取水しています。湖を堰き止める堤高155メートルのダムは、9,300万立方メートルの総貯水能力があります。ダムと発電所の落差は1,000mあり、水が水圧管を通り10MPaの水圧で発電所のタービンを回転させます。
電力網の重要な電源
このように水力を利用し、同発電所では65MWのタービン2基で年間最大330GWhの発電を行っています。こうした発電データは、ヴァルペッリネ発電所がヴァッレ・ダオスタ州地域の電力需要を支えるだけでなく、イタリアの国家エネルギー戦略計画にとっても重要なものとなっています。大規模停電が発生した場合、同発電所は国内の220kVの高圧電力網に電力を復旧する発電所の1つとなっています。
異常の兆候を見逃さずに検出
設備運用部門で電気設備の保守を担当するエンジニアであるAntonino Sannolo氏は、同発電所を含むCVAの他の発電所も、常時安定して稼働させることがCVAのエンジニアの重要な役目だと言います。「私が所属する部署は、約70基の水力発電機の保守を担当しています。保守作業を正確に計画するためには、常に発電所の状態を把握する必要があります。このため、主要な機械部品の非破壊検査や熱画像診断による点検、制御・保護装置の対策、発電機の電気保安検査、タービン軸の振動検査などを実施しています。故障につながる異常を検出できなければ、設備の故障や経済的な損失につながります」
制御・監視システムの統一
こうした点検や検査で大きな課題となるのが、約3,200平方キロメートルにわたるヴァッレ・ダオスタ州全域に点在する水力発電所の立地です。
「発電機への立入が困難な場合や、山腹の洞穴に建設されている発電所もあります」と、Sannolo氏は言います。「現場で行う保守点検や巡視点検の負担を減らすため、私たちはifmのような企業の力を借りてすべての発電所でデジタル化を進めています」
この計画では、ヴァッレ・ダオスタ州内の22か所の水力発電所で運用中の制御・監視システムを統一して更新し、ITレベルで一元管理できるようにします。この目標に向けてヴァルペッリネ発電所では、水車と発電機のメンテナンスの必要性を常時監視するために、ifmの振動センサを既に設置しました。この他に、クーラントの圧力と温度を監視するセンサも導入しています。
冷却水の循環と取水も監視
CVAでは、最先端のデジタル化ソリューションを既に導入した発電所もあります。例えば、1926年に建設された41MWのコバロー(Covalou)水力発電所では、安定した発電を行うため、ifmのセンサから重要なプラントデータを記録してITレベルへ伝送しています。この発電所では、温度と圧力に加えてクーラントの流量監視も行っています。これらのデータに振動センサのデータも組み合わせ、発電所の状態が正確に把握できます。
IIoTプラットフォーム:データ分析とアラームを一元管理
CVAは、ITレベルにも最先端のシステムを導入しています。その一例が、ifmのIIoTプラットフォームmoneoです。moneoは、IO-Linkネットワークのパラメータを中央で一括設定したり、伝送されたセンサデータをプロセス最適化に活用する他にも、さまざまな機能があります。moneo RTMは、振動センサのデータを評価してあらかじめ設定したしきい値を超過すると、発電所のオペレータに警告を送信します。
「moneoが収集した幅広いデータを利用して、あらゆる振動の傾向をリアルタイムで技術者が社内で分析できるようになりました」と、Sannolo氏は言います。「近年は新しい分析手法を開発し、オンライン上の検査で故障の兆候が見つかった場合だけ現場で点検を実施し、通常の巡視点検の頻度を最小限に抑えられるようになりました」
写真1(左)と 2(中央):CVAは、moneoを使って各水力発電所のデータの詳細分析を社内で行っています。
写真3(右):すべての診断機器からのデータをITレベルで一括収集し、IIoTプラットフォームmoneoで分析します。
長期的な目標:予知保全の実現
こうしたデータすべてをシステムで一元管理することにより、CVAの技術者とエンジニアは、いつでもより簡単にすべての情報を追跡・比較できます。「すべてのセンサ情報は、1つのデータベースに伝送します。今後を長期的に見据えて、本当の予知保全を実現したいと思います。この大きな目標は、優れた振動分析の導入から始まると確信しています」
ifmのmoneo|Industrial AI Assistantは、AI(人工知能)による発電所の精密な状態監視と、緊急的な損傷への迅速な対応を可能にします。そのために、履歴データを使って各ツールに発電所の正常な状態を学習させます。この知識を利用して、SmartLimitWatcherで変動する振動の挙動を正確に監視し、PatternMonitorで温度・圧力・流量などの紐づけられたデータのそれぞれの値の上昇/下降トレンドや、大きな変動・急激な変化を分析します。
過酷な環境で安心して使えるセンサの高い信頼性
「ifmの製品には非常に満足しています。検査と運用の両方で、当社のような使用環境に最適だと思いました」と、CVAの水力発電所で自動化を担当するManuel Bonjean氏は言います。
「ifmのセンサは、当社の水力発電所のように湿度が高く、気温の低い冬のアルプスのでも確実に動作します。ifmのソリューションを導入してより良いシステム監視が実現しました。また、すべての水力発電所で同じセンサ技術が導入できたため、スペアパーツの保有数と種類のばらつきも大幅に削減できました。これにより予算も抑えられ、保守作業も自分達で簡単に計画できるようになりました」また、Antonino Sannolo氏はこう言います。「ifmとの取引は、最初は部品を購入するだけでした。その後、ifmがソリューションとしてITによる専門的な振動解析も提供していると分かり、より緊密に連携し現場の設置作業と試運転に協力してもらうことを決めました。システムの導入が完了した後もifmの専門技術とサポートに頼ることができ、このような対応ができるシステムサプライヤーは中々ありません」
運用から100年近く経過した設備や、立入が困難な立地にあるCVAの水力発電所は、ヴァッレ・ダオスタ州全域にあります。
結論
ヴァッレ・ダオスタ州の生活と産業に欠かせない電力を、持続可能な再生可能エネルギーで供給するCVAの発電所が長期間安定して稼働できるよう、ifmは運用中の設備に導入できる効果的なデジタル化ソリューションでサポートしています。