屋内垂直農業に向けた徹底的なソリューション
80億人(の一部)に食糧を供給するには
Urban Crop SolutionsとPLNTは屋内農業でサプライチェーンを切断。
2022年11月15日、ついにその時がやってきました。世界の人口が公式に80億人を突破したのです。そして、その数は右肩上がりを続けています。人類への食糧供給は日を追って深刻化する問題であり、革新的な企業が次々と挑む問題でもあります。ベルギーのワレヘムに本社を構えるUrban Crop Solutionsもその1つです。
「私たちは屋内垂直農業に対するエンドツーエンドソリューションのプロバイダーであると自認しています」。Urban Crop Solutionsの創業者であり、CTOであるMaarten Vandecruys氏はこう言います。具体的にいうと、Urban Crop Solutionsは野菜の最適な成長に必要なハードウェアやソフトウェアの技術を提供するだけでなく、自社の研究センターで、温度、光条件、水やり、施肥など、野菜の成長に影響を与えるパラメータを解明しているのです。野菜の最適な成長のためには、個々の要件を正確に見極め、満たさせなければなりません。
これまで消費されていた水のわずか5パーセント
これが本当なら、屋内農業は極めて効率的に実施できます。「これまで野菜を育てるときに消費していた水の5パーセントの量で、野菜を育てることができます。また、最終消費者の近くで野菜を生産できるので、環境に与えるストレスがさらに軽減されます。最後に、屋内農業は殺虫剤を使わずに行うことができるので、商品の栄養価が大幅にアップします」とVandecruys氏は言います。
屋内農業 - 3次元に拡大縮小
Urban Crop Solutionsは、効率の良い屋内農業に必要な技術的ハードウェア「ModuleX」を提供しています。
「ModuleXは、当社の屋内垂直農業ソリューションで最新の開発レベルです」とVandecruys氏は言います。
基本的な原理は、輸送ベンチに植えられた野菜が2段の水平回転棚に乗って、LED照明と水やりシステムの下を移動していきます。野菜の高さが26㎝まで成長できるスペースのベンチが全部で64個あります。この概念による設計は、必要に応じて3次元すべての方向に拡大縮小できます。
「個々のユニットはそれ自体が1つの自己完結型システムです」とUrban Crop Solutionsの創業者は付け加えます。「たとえば、病気などに感染したときには、感染したユニット1つだけを処分すればいいという利点があります。残りの野菜は感染の影響を受けないので、収穫できる野菜の損失を大幅に減らすことができるのです」
質の高いハーブやサラダをアントワープに届ける
PLNTはUrban Crop Solutionsの概念に沿った設計を実際に応用し、成功している企業の1つです。共同創業者のHans Snijderのチームは、アントワープ港にある拠点から、地元の消費者に新鮮なサラダやハーブを提供しています。「私たちは、最高の品質で最大の持続可能性を持つ商品を生産し、輸送することを約束しています」とSnijder氏は述べています。
同社の顧客は、同じ価値感を持ったアントワープの家庭やレストランです。個人の顧客はサブスクリプションプランを購入し、さまざまな種類の新鮮なサラダを配送してもらうことができます。また、PLNTはレストラン向けに、個々のニーズに合わせた生産も行っています。栽培される野菜は通常、レストランの料理長と綿密に相談した上で選ばれます。PLNTは全部で約35種類の野菜を契約者向けにModuleXで育てています。
本当に必要とされているものだけを育てる
「私たちは品質だけでなく、量も大切にしています。私たちの廃棄物ゼロの信条には、当然ながら収穫物も含まれます。今の需要を賄うに足ると分かっている量だけを生産し、それを超えることはありません」PLNTは現在、ModuleXを稼動させています。
「Urban Crop Solutionsのソリューションを選んだ理由はいくつかあります」とSnijder氏は説明します。「まず、ここアントワープでは土地が非常に希少なので、垂直方向に拡張できることは私たちにとって好都合です。また、扱いやすく、質の高いソリューションにも感銘を受けました」
3次元に拡張縮小な屋内農業を可能にしたUrban Crop SolutionsのModuleX。
さらなる価値をもたらす細部までこだわった品質
ModuleXの品質を認証されたレベルまで高めるために、Urban Crop Solutionsは個々のコンポーネントについても、最大の品質と信頼性を持つものを選んでいる、とプロジェクトマネージャーのPieter-Jan Devos氏は認めています。
「私たちは完成されたソリューションに最大の付加価値を付けてお客様に提供するため、それぞれのコンポーネントを私たち自身で選んでいます」センサシステムに対しても同じです。その品質は野菜の品質に直接影響を与え、そしてまた利用者の収穫量や屋内農業の収益性にも影響します。
センサシステムにより保証されたプロセス品質
センサシステムが合計5つの重要ポイントを監視し、屋内垂直農業用システムの効率的で信頼性の高い運用を保証します。高周波誘導式近接センサはModuleXのドアが開いているか閉じているかを判断します。
「当然のことですが、野菜を収穫したり、ベンチに新しい苗を配置したりするためにドアを開けている間は、自動プログラムは稼動すべきではありません」とDevos氏は言います。ベンチ自体の位置もセンサシステムが監視します。「輸送システムで、ベンチが正しい位置からずれた場合、野菜とシステム全体がダメージを受ける可能性があるので、回転棚が問題なく動作していることを確認することが重要です」
野菜の品質を決める要因:水の量と温度
流量計で水の流れを測定し、野菜に合った水やりを行います。「この方法は、ポンプが仕様どおりに動作しているか、メンテナンスが必要かどうかも判断できます」とDevos氏が説明します。水温も成長と品質に影響するので、温度センサで常時監視しています。また、レベルセンサはタンク内の水のレベルを測定します。
「水の消費を最小限に抑えるために水を再利用していますが、それでももちろん、常に十分な水を確保し、野菜が枯れるのを防ぐ必要があります」
ifmを戦略的に選択
「センサシステムのパートナーとしてifmを選んだのは非常に戦略的な決断でした。ifmのセンサの性能は徹底的な試験で実証されています。今日まで一度も不具合を起こしたことはありません。しかし、万が一、お客様のシステムでセンサを交換しなければならない場合にも、交換品を速やかに受け取れることを知っています。それも、ここ、ベルギー国内だけではありません。世界中、どこにいてもです。製品の品質に加えて、この卓越したサービスに非常に感銘しました」
写真1:全体的なコンセプトである持続可能性。アントワープにある企業、PLNTは使い古しの海上コンテナで、地元の需要を常時カバーできるだけの量の野菜を生産しています。写真2:ifmの高周波誘導式近接センサによるModuleXの安全で信頼できる輸送プロセス。写真3:野菜の品質を決定する3要素である充填レベル、温度、流量をifmセンサで監視。
垂直農業は農業部門の未来となるか?
屋内農業で育てられた野菜の品質の良さは、PLNTの商品の人気が実証しています。同社は事業を拡大し、他の都市中心部でも地元で生産された高品質の商品を購入できるようにしたいと考えています。Hans Snijder氏はこの状況を次のように考えています。「屋内農業の一般化はまだ始まったばかりです。
私たちは自分たちを先駆者と考えていますが、これは私たちにぴったりの役割です。技術がこのまま向上を続けたとしても、すぐに屋内農業が従来の農業にとってかわるとは思えません。まだそこまでは効率的になっていないのです。また、少なくとも私たちがいる地域は、まだ気候が良く、従来の農法で思いどおりの収穫を上げ、基本的な需要を満たすことができます」
Maarten Vandecruys氏の意見も同様です。「世界の動向という点ではなく、サプライチェーンを短縮し、健康的で栄養価の高い食料を地元で生産するという点において、屋内農業は重要な要素ですが、同時に、増え続ける食料需要をカバーするには、従来の農業部門が今後も必要です。この場合、屋内農業は苗を育てるという役割を果たします。その後、この苗を畑に植えることができます。Urban Crop Solutionsは、ストレスの高まり続ける気候条件下でも良好な収穫高を確保できるよう、屋外農業向けの頑強な植物の研究開発にノウハウを注ぎ込んでいます」