純水および超純水処理システム
ただきれいなだけではない。混じりけひとつない純粋な水である
EnviroFALK GmbHは30年以上にわたって、世界の幅広い産業向けに純水・超純水系の設計、製造、販売を行ってきました。基本的に、プロセスセンサにとって、蛇口から出てくる水に問題はありません。しかし、超純水は全く別の話です。このような処理プロセスで使用されるセンサは、はるかに効率的で、妥協のないものでなければなりません。
水道水で表面を掃除したことのある人ならだれでも知っていることですが、目障りなシミが出てくるかもしれません。窓ガラスやガラスのコップでは、ただみっともないだけかもしれませんが、工業的な処理では、製品の品質を著しく損なう恐れがあります。たとえば、後工程のコーティングや電気メッキに備え、処理水を使用して、加工後の金属部品をすすぎ、油や冷却剤を除去する場合や、光学工業や医療技術の場合には、すすぎに使った水が乾燥後に残留物を残してはいけません。
その解決策は純水です。この水に溶存ミネラルや塩分、バクテリアは含まれていません。品質等級に応じて、純水または超純水という語が使われます。
超純水システム
ドイツのヴェスターブルクを拠点とするEnviroFALKは、この分野のスペシャリストとしての地位を確立しています。1989年創業の同社は、現在、超純水システム市場をリードする企業の1つです。共同創業者でManaging DirectorのPeter Leyendecker氏は次のように説明します。「私たちは逆浸透システム、限外ろ過、ナノろ過、イオン交換システムなど、市場で利用できるさまざまな水処理技術からコンセプトを発展させます。また、私たちのシステムでは、異なる技術を組み合わせて使用することもよくあります。水還元や再循環、特に純水処理のための完成されたコンセプトをお客様に提供します」
EnviroFALK社の測定・制御エンジニア、Maximilian Meurer氏はその仕組みを次のように説明します。「このプロセス水処理システムでは、蛇口から出てくる普通の水をそのまま注入します。最初のステップで水を軟化します。逆浸透により、この軟水をフィルタし、形物をすべて除去します。次の純化ステップで、この水をイオン交換カートリッジに通します。このカートリッジには特殊な粒状体である混床樹脂がいっぱいに詰まっていて、これが水からすべてのミネラルを取り除きます。この完全な脱塩水の品質を確認するため、私たちはifmの導電率センサを使っています。センサの提供するプロセス値を見れば、カートリッジが消耗し、交換が必要になると、導電率が上昇することがすぐに分かります。純水は中間貯蔵用タンクにポンプで注入されます。また、さまざまな用途で柔軟に使用できるように一部は加熱されます。また、細菌に対抗し、高い純度を維持するため、脱塩水は紫外線を照射されます」
センサと要件
超純水の複雑な処理プロセスを監視し、恒久的な高品質を保証するために、自動化のスペシャリストであるifmのさまざまなセンサが使われます。ほんのわずかな汚染や再ミネラル化であっても品質を低下させる可能性があるので、何としても避けなければなりません。EnviroFALKが配管やタンクで埋込式センサを使用しているのはこのためです。メリット:不要な濃縮につながる可能性のある静水の原因となるデッドスペースがありません。また、脱塩水は常に不自然な脱塩状態を補おうとして、 たとえば、ありきたりなステンレス鋼の壁など、周囲の物質からミネラルを溶かし出そうとしますが、これが時間の経過とともに、穴の原因となるという問題もあります。そのため、このシステムの配管はプラスチック、または極めて品質の高いステンレス鋼で作られています。同じことは媒体と接触するセンサにも言えます。ifmは超純水を使う事例には、特別なセンサを提供します。センシング面に接触する部品は、超純水が分子を抽出できない高品質のステンレス鋼などの物質で構成されます。
主な測定値:導電率
製品品質やプロセスの信頼性にとって、水の純度が非常に重要な場合には、LDL101導電率センサが適しています。導電率の値は、水の電気抵抗率の値の逆数です。純水であればあるほど、抵抗値が高くなり、導電率が低くなります。
EnviroFALKの測定・制御エンジニア、Maximilian Meurer氏は次のように付け加えます。「私たちは導電率の測定にLDL101 IO-Linkを使用します。これは高度に精製された水の品質を保証するための重要ポイントです。導電率は水中のイオン濃度を示します。自由イオンの数が少なければ少ないほど、導電率が低くなります。私たちは、LDL101導電率センサの1センチメートルあたり0.04から1,000マイクロシーメンスという非常に大きな測定スパンに感銘を受けました。これは、取水口で普通の「公営水道」の水を取り入れ、排水口で超純水を出すまで、システムのあらゆるステージを1種類のセンサでカバーできるという点で理想的です。使用するセンサの種類を1つにすることで保管コストが削減されます。また、フィールドのサービスエンジニアにとって、センサの種類が少ないということは、複雑さが軽減されるということでもあります。このセンサのコンパクトなデザインにも驚かされました。センサは標準のM12コネクタ接続が可能です。高価なデータケーブルは使いませんし、キャビネット内に外部評価ユニットは必要ありませんから、時間やスペース、コストの節約になります」
高い分解能とIO-Link経由による測定値の損失のないデジタル伝送により、水質を継続的に正確に分析することが可能になり、高精度なプロセスが実現できます。たとえば、超純水の生産中に導電率の値が上昇した場合、これは部品のメンテナンスが必要であることを示します。
完璧な差圧測定
配管内の圧力をシステムの数か所で監視する必要があります。将来的には、複雑な水システムでPL15圧力センサを使用し、いくつかのタスクを組み合わせて遂行する予定です。「まず、ポンプの制御にPL15を使用します。IO-Linkのおかげで、このセンサは0~10 barの圧力範囲全体で優れた分解能を示します。IO-Linkでは測定値をデジタル形式で直接読み取ることが可能で、変換損失がないため、精度がさらに高まります。さらに、センサ自体で設定を行う必要がなくなるため、取り扱いが容易になります」圧力センサがその長所を真に発揮できるもう1つの活用分野がタンクです。「PL15はレベルの監視にも適しています。周りと同一平面になるように埋込まれているため、デッドスペースが生じず、不要な濃縮が起こりません。この圧力センサには、追加のプロセス値として媒体温度を提供し、これによりプロセスの透明性と制御がさらに強化されるという長所もあります」とMaximilian Meurer氏は述べています。
特別にコンパクトな埋込式圧力センサPL15シリーズはIO-Linkを介して自由に構成することが可能で、最大の柔軟性を提供します。
超純水の流量を正確に測定
お客様にとっては、処理プロセスの最終段階で生成される純水の量も重要です。逆浸透の間、供給水流は「ろ過生成物」と呼ばれる純水の水流と、粒子を含む濃縮物の水流に分けられます。たとえば、プラントのオペレータは両方の水流量を比較することで、フィルタのメンテナンスが必要であることや、供給水流が異物で高度に汚染されていることを見て取ることができます。正確な結果を得るためには、システムの複数箇所で流量を正確に測定する必要があります。
このために、センサの専門企業、ifmは、超純水を使う事例に対応した、毎分1,000リットルまでの流量を高精度で検出できるSUタイプの超音波流量計を開発しました。超音波技術のおかげで、このセンサはEnviroFALKのプラントで生成されている低導電の超純水にも適用できます。LDLファミリの導電率センサと併用することで、ろ過プロセスの品質と流量を高い信頼性で制御できます。流量計のステンレス測定管はさらに高品質のステンレス鋼でできていて、測定素子やシール、可動部品がついていません。そのため、インペラやタービンなどの機械系で起こりうる、付着物や損傷、漏れや詰まりに起因する不具合や、他の測定原理で発生するような設計関連の圧力低下は最初から除外されます。測定管はステンレス鋼だけで作られているので、 電極やシールなどの材料との適合性試験は不要で、残留物なく、簡単かつ完璧に洗浄することができます。信号の強度を符号で表すLEDは、安定したプロセスを可視化した追加の指標です。値の低下は、配管の内壁に粒子や気泡、付着物が存在することを示します。
写真1:ifmの超音波流量計の測定管には測定素子や可動部品がついていないので、超純水を扱う事例での使用に理想的です。写真2:純水タンクの蓋の外側に取り付けられた非接触レーダーレベルセンサLW2120。
レーダーでタンク内を非接触測定
IO-Link対応のLW2120 レーダーレベルセンサは、タンクのレベルを非接触で測定するのに最適です。このセンサはミリ単位の分解能で最大高さ10メートルまで死角なく検知できます。使用される周波数は80 GHzで、密閉された空間でも、安定した正確な測定結果を得られます。アクセサリとして提供されているアンテナ延長ケーブルを使用すれば、密閉された金属製タンク以外の場所、たとえば、開放槽やプラスチック槽などでも使用できます。
「一部の事例では、静水レベル測定の代わりにレーダーセンサを使用します。たとえば、超純水の現場で最終顧客がこれを要求したとしましょう。この現場では、あらゆるねじ接続、あらゆる測定点が汚染源となりえます。このような例では、レーダーセンサを使ったレベル測定が有効です。センサがタンクの蓋の外側に取り付けられ、媒体と接触しないからです」とMaximilan Meurer氏は説明します。
このセンサは数分のうちに、標準的なM12コネクタ接続で、ミスなく確実に取り付けられますし、IO-Linkにより、リモートパラメータの設定や読み取りができるようになり、利便性がアップします。この装置はインテリジェントなアルゴリズムを搭載しているため、IO-Linkを介したパラメータ設定はとても簡単で、基準となる高さを一度設定すれば、センサは直ちにIO-Link経由で正確なレベルを返します。
IO-Linkによる付加価値
IO-Linkといえば、この技術に刺激を受けたEnviroFALKは、このデジタル通信プロトコルを使ったセンサの採用を決めました。
Maximilian Meurer氏はその利点を次のように説明します。「IO-Linkのおかげで、HMIとコントローラを介して、センサの1つ1つまで完全に見通すことができます。異常事態が発生した場合、各センサの診断データが問題の迅速な特定と解決を助けてくれます。センサのデータをコントローラに渡すのも非常に簡単です。周期的なデータクエリのおかげで、測定値は直接、数値として提供されます。以前、測定値がアナログだったころには、これは不可能でした。IO-Linkにより、シリアル番号や校正データなど、その他のデータもクエリやデジタル化ができるようになります。また、たとえば、流体センサの場合、1分間あたりのリットル数、1時間あたりの立方メートル数など、測定値の出力単位を指定できますし、さらに、IO-Linkを使って、センサの測定値を伝送することも可能です。その一例が導電率センサですが、タンクや配管で使っている圧力センサもこれに該当します。圧力を測定して、タンクのレベルを判断しますが、それと同時に、センサが提供する温度を読み取って、タンク内の媒体の温度を知ることができます。これにより、新たに温度センサを設置したり、設置に伴い、タンクにねじ接続を追加したりする手間が省けます。SUタイプの流量計も1本のデータ回線を通じて、数種類の測定値を送信します。現在流量とセンサのステータスに加え、IO-Link通信により積算流量と温度の測定も可能です。さらに、データストレージ機能のおかげで、誤ったセンサが使用されたり、配線ミスがあったりした場合、私たちや最終顧客はすぐにこれを知ることができます。この機能もありますし、マスタとこの装置の両方であらかじめ配線済みのM12コネクタケーブルをただ接続するだけですから、センサを交換するだけのことに、資格を持った電気技師は必要なくなります」
IO-Linkは包括的なパラメータ設定を支援します。出力機能、測定範囲、切り替えポイントなどのパラメータは、センサの特性値の範囲内で自由に選択できます。これまでは多種多様なセンサが必要でしたが、今はほとんどの場合、IO-Link装置だけで事足ります。
Maximilian Meurer氏は次のように述べています。「IO-Linkの最大の利点は、センサの種類と保管コストが削減されることです。サービス技術者は、機器交換の際、たくさんの種類のセンサを必要としなくなりました。これにより時間とコストを節約できます」
IO-Link通信プロトコルは、センサの1つ1つにアクセスを提供します。これにより、最高の透明性が実現され、トラブルシューティングが簡単になります。分散型のIO-Linkマスタは制御キャビネットのスペース節減に役立ち、また、センサやアクチュエータへの接続を可能にします。プラントコントローラへの接続はProfinet経由で行われます。
ifmのコンパクトなPV圧力センサは、プロセス接続がG1/4であるため、小型の配管にも適しています。圧力に加え、媒体の温度もIO-Link経由で送信します。
結論
ifmセンサは純水システムと超純水システムで、能率的かつ正確なプロセスの監視を可能にします。IO-Linkにより、保管コストと取り付けの複雑さが軽減され、その結果、コストが大幅に削減されると同時に、企業がデジタル時代へ移行したときに、すべてのプロセスの透明性が完全に実現されます。
ひと言でいえば、みごとな解決策なのです。