テストベンチの油圧ユニット監視
油圧ユニットは油圧テストベンチの心臓部となる部分です。圧力センサは、圧力インパルスの油圧テストベンチを使って行われる加速寿命試験を経て認定されます。
試験設備が故障すると、計画通りに試験を実施できなくなるため開発期間が延びてしまいます。また、必要な試験が実施できない間は量産品の品質が保証できず、一部の圧力センサは出荷停止となってしまいます。これは製品グループ全体の販売にも直接影響し、製品が入手しづらくなります。
初期状態
現在、油圧ユニットには温度・圧力・レベルの各センサが設置されています。こうしたセンサからの情報を利用してシステムを制御し、限界値の超過・低下時に機械を停止させます。油圧パワーユニットは作動油を冷却する2つのタンクを備えています。
油圧パワーユニットのもう1つの特徴は、全く同一の構造でポンプを二重化している点です。システムの既存のポンプを二重化することにより、長時間のアイドルタイムによるベアリングの焼き付き等で片方のポンプが損傷しても、他方のポンプが同じように稼働するため、機械の故障を防いで総稼働時間を延ばすことができます。
プロジェクトの目的
油圧ユニットの総合的な状態監視
油圧装置の消耗とポンプの稼動時間を監視して最適化することを目的とします。自動アラーム制御により限界値の超過・低下を早期に検知します。
実装
システムに設置済のセンサを利用して信号を収集するYパスのレトロフィットを行います。各所に2つずつのレトロフィットを実施しました。
タンク
取扱説明書に従い、以下のセンサの設置とセットアップを行いました。
ポンプ
- 電磁誘導式IO-Link近接センサとスピードセンサ
- IO-Link振動センサ
リターンライン
- ケーブル型温度センサ
- IO-Link温度センサ診断ユニット(PT100/PT1000温度センサ診断ユニット)
moneo RTMを中央サーバにインストールします。IO-Linkマスタを使用してセンサデータをmoneo RTMへ伝送して表示・診断を行います。
その結果、
moneo RTMを使った油圧ユニットの総合的な状態監視
総合的な状態監視に必要な要件を、コントローラからセンサデータを取得するレトロフィットの実施と、油圧ユニットの特性値の記録機能を追加することにより達成しました。
- システム圧の連続検出
- タンクレベルの連続監視
- タンク内温度の連続監視
- ポンプの振動監視
- ポンプ稼働時間の計算
- リターンラインの温度監視
- リターンラインとタンク間の温度の差計算
- 油圧装置の消耗検出
- ポンプ使用率の最適化
システム構成
- リターンラインのケーブル型温度センサ +温度センサ診断ユニット
- ポンプ2の振動センサ
- ポンプ2の電磁誘導式近接センサ + スピードセンサ
- ポンプ1の振動センサ
- ポンプ1の電磁誘導式近接センサ + スピードセンサ
- タンク2の温度センサ + データコンバータ(0~10 V)
- タンク2のレベルセンサ + IO-Linkデータスプリッタ
- タンク1の温度センサ + データコンバータ(0~10 V)
- タンク1のレベルセンサ + IO-Linkデータスプリッタ
- IO-Linkマスタ
ダッシュボード
設備内の現在のセンサ値がダッシュボードに表示されます。下の画像はプロセスに紐づけられたパラメータの概要を表示したダッシュボードの画面です。
- リターンラインの温度
- タンク1の温度
- 温度差(リターンライン - タンク1)
- タンク1のレベル
- システム圧
- タンク2のレベル
- タンク2の温度
- ポンプ1の回転速度
- ポンプ2の回転速度
ダッシュボードの別の画面には、ポンプの現在の特性値等のさまざまな情報が表示されます。
- ポンプ1の振動値(v-RMS、a-Peak、a-RMS)
- ポンプ2の振動値(v-RMS、a-Peak、a-RMS)
- ポンプ1の回転速度
- ポンプ1の稼働時間
- ポンプ1の温度
- ポンプ2の回転速度
- ポンプ1の稼働時間
- ポンプ2の温度
分析
分析機能を使って、保存されたセンサの履歴データにアクセスすることができます。これにより、例えばトラブルシューティングを簡略化します。センサのさまざまな値を時系列で確認して分析できます。
次の画像は、振動値(v-RMS)と作動油の温度の相関関係を見やすく分析した画面です。例えば、振動値を利用して作動油の温度が正常かどうかの判断指標にすることができます。
- 青:リターンラインの温度
- 白:タンク温度
- 緑:振動値v-RMS
静的しきい値
油圧ユニットのさまざまなプロセス値に静的なしきい値を設定します。プロセス値がしきい値を超過・低下した場合はmoneoからチケットが発行され、ルールに従い処理を進めます。
- アラームの上限しきい値
- アラームしきい値の遅延時間
油圧ユニットのリミット値監視に次のプロセス値を使用します。
- タンク1と2のレベル
- タンク1の温度
- リターンラインの温度
- ポンプ1と2の温度
- ポンプ1と2の振動値
計算値
計算値とテンプレートを使用して測定値から追加情報を生成できます。
動作時間カウンタのテンプレートを使用して稼働時間を記録したものが下の画像です。ポンプの回転速度が50 rpmを超えると動作時間のカウンタが計測します。
- 計算値の名前
- 動作時間カウンタのトリガ
- トリガのしきい値
- 現在の動作時間
温度センサのアナログ値0~10 Vはスケーリングして実際の温度に対応させる必要があります(0 V = 0℃、10 V = 100℃)。
- 温度に対応するセンサのアナログ電圧値(0~10V)
- アナログエンドポイント(100℃ = 10 V)
- アナログスタートポイント(0℃ = 0 V)
- アナログ値の電圧範囲(10 V)
- エンドポイントからスタートポイントの差分計算(AEP ASP = ∆A)
- 電流からパスカルに換算する係数(∆A / 10 V = 係数)
- 電流値(0~10 V)の乗算の係数
- 補正のためのアナログスタートポイントの加算
- パスカル単位で表示された差圧の結果
レベルセンサは補正されていない測定値をIO-Linkインターフェースで伝送します。これを測定値に加える必要があります。
- タンクレベル値の生データ
- レベル値への補正
- 補正されたレベル値