- 導電率センサLDL
- テクノロジー
導電率センサの技術
導電率測定は、物質(溶液)の中の電流の流れやすさを測定することです。媒体中を移動するイオンの量(塩・酸・アルカリ)と媒体の温度によって、導電率は変化します。移動するイオンの量が多いほど導電率は高くなります。導電率センサは通常、媒体と接触する2つの金属電極で構成されます。電解溶液に浸した2つの対向する電極に電圧をかけると、電極間に電流が流れます。
正の電荷を持つイオン(陽イオン/カチオン)はマイナス側の電極に移動し、負の電荷を持つイオン(陰イオン/アニオン)はプラス側の電極に移動します。媒体中を移動するイオンは、媒体の導電率が高いほど、そして電流が大きいほど多くなります。
導電率センサは測定方式によって形状が違います。測定方式には電極式と電磁誘導式があります。
トピック
LDL100導電率センサ
LDL100は、媒体接触式センサのように媒体の導電率を直接測定する2つの金属電極があります。ifmの電極式導電率センサは、センサのハウジングからプローブにかけての金属部分が第1の電極となり、センサ先端の金属部分が第2の電極として機能する設計が特徴です。
センサ先端と配管に接続されるハウジングのねじ留め部分の間に電圧がかけられ、流れる電流を測定します。
注意:金属電極間の電流を測定する設計のため、LDLは樹脂配管への設置は推奨しません。
LDL101導電率センサ
LDL101は、LDL100のようにハウジングが電極にはならず、2つの穴が開いた電極にもう1つの電極がはめ込まれた構造になっています。内側と外側の電極に電圧をかけて、2極の間に流れる電流を測定します。
LDL100と違い、LDL101はセル定数が固定されています。ifmの専用ソフトウェアを使用すると、測定範囲全体で最適な分解能が得られるセル定数を設定できます。そのため、LDL101は、他のセンサが持つさまざまな機能を備えています。
電磁誘導式導電率センサは、樹脂製のハウジング(ifmではPEEK製)に収納された2つの鎖交する金属コイルで構成されています。液体媒体にセンサを浸漬すると、第1のコイル(励磁コイル)で交流磁界が発生し、交流電圧がかけられます。すると、媒体の導電率に比例した誘導電流が流れます。第2のコイル(検出コイル)には誘導電流に比例した電圧が発生し、これを測定することにより媒体の導電率が分かります。
電磁誘導式導電率測定のメリット:
- ハウジング先端がPEEKのため腐食しない
- 粒子を含む媒体も測定が可能(測定部の詰まりに注意)
知っておきたい
ハウジング先端のPEEK部は、射出成形品のため突起部が折れることがあります。特にCIPのアプリケーションでは、温度と圧力の変動による応力で折れる恐れがあります。
そこで、PEEKの一体成形により温度の変化を均等に伝えてプローブ全体に圧力を分散させることで、応力の一点集中を防いでいます。こうすることで、機器全体の稼働率を維持します。
LDLセンサの温度の影響
物質の導電率は、温度が1℃上昇すると約1~5%変化し、温度に大きく影響されます。ifmの導電率センサは温度測定機能を内蔵しており、媒体の温度変化を自ら補正します。
このグラフは温度補正の有無による導電率を比較したものです。補正しなかった場合(青線)は、導電率は温度と共に上下します。つまり、同じ媒体でも導電率は一定ではありません。補正した場合(オレンジの線)では、測定値はばらつきがなく一定した値になります。これにより、測定のタイミングによる値を比較することができます。温度補正とその方法については、校正のページをご覧ください。
ifmでは、無料で導電率センサの工場校正証明書を発行しています。証明書は製造工程で自動的に発行し、シリアル番号が割り当てられます。センサは、温度と導電率それぞれについて各手順を経て校正されます。最終校正では基準センサとの比較を行っています。こうしたすべての情報が、工場証明書に記載されています。
ifmのウェブサイト上にある工場校正証明書から無料でダウンロードできます。尚、ダウンロードの際はセンサのシリアル番号の入力が必要となりますので、あらかじめご用意ください。
フィールド校正
ifmのセンサは開封後すぐに使用できる状態で納入されます。また、特定の媒体や使用場所の温度を基準にしてセンサを調整することも可能です。このため、セル定数(CGA)と温度係数(T.cmp)という2つのパラメータの設定により、センサを既知の基準媒体に合わせて調整できます。
セル定数[CGA]:センサの測定カーブを基準となる既知の媒体の値に合わせます。値は80~120%の範囲で設定できます。セル定数は既知の値を測定値で割ります。
温度係数[T.cmp]:導電率の基準温度(通常25℃)からのばらつきを補正するための値です。
- 補正値は0~5%/Kの範囲で設定可能です。
- 媒体のデータシートに記載されている係数(水性媒体の場合は2%)を使用するか、同じ媒体の温度を2点測定して得られた温度直線から温度係数を決定します。
CGAとT.cmpの調整でより高い精度が得られますが、通常は行う必要はありません。